日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会認定 専門医在籍施設

急性副鼻腔炎(急性ちくのう症)

急性副鼻腔炎とは?

子どもがかかりやすい原因と症状、治療法を解説

急性副鼻腔炎(きゅうせいふくびくうえん)は、鼻の奥にある「副鼻腔(ふくびくう)」という空洞部分に急性の炎症が起きた状態を指します。原因の多くは風邪を契機とした細菌感染で、鼻の粘膜の炎症が副鼻腔に広がることで発症します。そのほかアレルギー性鼻炎、まれに虫歯や顔面のケガが引き金となる場合もあります。

一般的な傾向として子どもは急性副鼻腔炎にかかりやすい傾向があります。子どもは鼻の通り道(鼻道)が大人より狭く、鼻水が詰まりやすいことや、自分で上手に鼻をかめないことも一因です。つまり、風邪をきっかけに副鼻腔に炎症が及びやすく、これが急性副鼻腔炎を引き起こします。

主な症状

急性副鼻腔炎になると、風邪に似た症状から始まりますが、次第に特徴的な症状が現れてきます。

また、鼻水の性状も変化し、色やにおいで風邪との違いに気づく場合があります。

急性副鼻腔炎の主な症状の例
  • 濁った黄色〜緑色の鼻水が大量に出る(鼻汁が粘り、膿のようになる)
  • 強い鼻づまり(鼻が詰まって口で呼吸している、いびきをかく)
  • 額や頬を押すと痛がる、頭痛を訴える(※小さなお子さんは顔の痛みをうまく伝えられない場合もあります)
  • 鼻水がノドに流れ込むことで痰を伴う咳が長引く
  • 発熱することもある(微熱程度から場合によっては38度以上の熱)

こうした症状が見られ、特に鼻水の色が濃くなってきた場合は、ただの風邪ではなく急性副鼻腔炎を疑いましょう。子どもは自分で症状を詳しく説明できないことも多いので、保護者の方が鼻水の様子や元気の程度を注意深く観察することが大切です。

放置するリスク

急性副鼻腔炎を適切に治療せずに放置すると、症状が長引くだけでなく、いくつかの合併症や悪化のリスクがあります。以下のような事態に進行する可能性があるため注意が必要です。

中耳炎への進行

鼻・副鼻腔に溜まった鼻汁や耳管(耳と鼻をつなぐ管)を通じて中耳に流れ込むと、急性中耳炎を引き起こすことがあります。特に子どもは耳管が太く短いため、鼻の感染が耳に波及しやすく、中耳炎になりやすい傾向があります。

慢性副鼻腔炎(蓄膿症)への移行

急性の炎症が十分に治らずに何週間も持続すると、慢性的な副鼻腔炎(いわゆる蓄膿症)に移行することがあります。一度慢性化してしまうと完治までに長期間を要し、治療も難しくなってしまいます。

炎症の重症化

副鼻腔内の強い炎症がさらに広がると、周囲の組織にまで感染が及ぶ恐れがあります。まれなケースですが、眼の周囲に炎症が波及すると目のまわりが腫れる眼窩蜂窩織炎(がんかほうかしきえん)を起こしたり、極めて稀には脳の膜にまで炎症が達して髄膜炎を発症する危険性もあります。

以上のように、急性副鼻腔炎を甘く見て放置することは大変危険です。しかし適切な治療を行えば、これらの合併症は防ぐことができます。お子さんの将来的な健康のためにも、症状が長引く場合は早めに医療機関を受診しましょう。

感染の可能性と家庭での注意点

「急性副鼻腔炎は家族にうつるの?」と心配される保護者の方も多いでしょう。

基本的に、副鼻腔炎そのものが他人に直接感染することはありません。副鼻腔炎はあくまで鼻の奥の炎症であり、人から人へ伝染する病気ではないのです。

ただし、急性副鼻腔炎の原因となった風邪のウイルスや細菌は家族にうつる可能性があります。お子さんが風邪をこじらせて副鼻腔炎になった場合、その元になった風邪が兄弟姉妹や周囲に感染する恐れがあるので注意しましょう。

家庭内で二次感染を防ぐために、いくつかのポイントに気を付けてください。まず、手洗い・うがいの徹底は基本です。鼻をかんだティッシュはその都度捨て、共有のタオルではなくペーパータオルや個人専用のハンカチを使いましょう。

また、お子さんの鼻水を拭いたり吸引したりした後は、看病する保護者の方も必ず手洗いをしてください。部屋の換気や適度な加湿を行い、細菌・ウイルスが停滞しにくい環境を整えることも大切です。

よくある質問

急性副鼻腔炎は自然に治りますか?

軽い副鼻腔炎であれば、身体の免疫力によって自然に治る場合もあります。しかし、症状が1週間以上続いていたり、鼻水の色が濃く悪化している場合は自然快復を期待しすぎないほうが良いでしょう。放置すると悪化したり合併症につながる恐れもありますので、長引くようであれば早めに受診することをおすすめします。

急性副鼻腔炎のとき、保育園・幼稚園や学校に行かせても大丈夫でしょうか?

お子さんの全身状態によります。発熱があったり痛みが強い間は、無理をせず自宅で安静にさせてください。熱が下がり、本人が元気で食欲もあるようなら、マスク着用や手洗いなど周囲への感染対策をしたうえで登園・登校が可能な場合もあります。ただし、鼻づまりや咳がひどい間は本人もつらく集中力が落ちるため、無理のない範囲で判断してあげましょう。なお、園や学校によっては「解熱後○日間は自宅療養」など独自のルールが定められていることも多いので、園・学校の指示に従ってください。

お風呂には入っても大丈夫ですか?

基本的に、お子さんに元気があるようなら入浴は問題ありません。お風呂の蒸気は鼻づまりの解消にも役立ちます。ただし、熱が高いときやぐったりしているときは入浴は避け、身体を拭く程度にしましょう。入浴する場合も長湯は避け、さっと温まる程度にしてください。お風呂上がりに体が冷えると症状が悪化することもありますので、髪を早めに乾かし、湯冷めしないように注意しましょう。

受診のタイミングと当院での対応

「ただの風邪だと思っていたけれど、もしかして副鼻腔炎かも?」と感じたら、早めに耳鼻咽喉科を受診することをおすすめします。特に、風邪症状が1週間以上続く場合や、黄色い鼻水と発熱が続いている場合、顔を痛がる場合などは受診の目安となります。

小さなお子さんであれば、長引く鼻水や夜間の咳込みが続くとき、耳をしきりに触ったり痛がる様子があるとき(中耳炎を併発している可能性があります)も、早めの受診をご検討ください。

早期に治療を始めれば、それだけ早く楽になり、合併症も防ぎやすくなります。

田中外科医院では、耳鼻咽喉科専門医が急性副鼻腔炎の診療にあたっています。お子さんの症状や年齢に合わせて最適な治療、効果的なお薬の選択などを組み合わせて、お子さんの負担をできるだけ軽減するよう心がけています。スタッフ一同、小さなお子様にも安心して治療を受けていただけるよう、やさしくサポートいたします。

急性副鼻腔炎は早めの対応が肝心です。「もしかして」と思ったら、お悩みを一人で抱え込まずにぜひ当院にご相談ください。