日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会認定 専門医在籍施設

良性発作性頭位めまい症について

良性発作性頭位めまい症(りょうせいほっさせいとういめまいしょう)は、頭や首を動かしたときに数秒から数十秒、長くて数分程度の激しいめまい発作が起こる疾患です。

その名の通り「良性」であり命に関わる病気ではありませんが、発作中のめまいは非常に強烈で日常生活に支障をきたすことがあります。

また、この疾患は首を動かすとめまいが起こる原因として最も多い代表的なものです。中高年の女性に多くみられますが、性別や年齢を問わず誰にでも起こり得るめまいです。

原因

耳の構造

耳の奥には音を感じる「蝸牛」と、体のバランスを感じる「前庭(ぜんてい)」という部分があり、前庭には三半規管と耳石器という器官があります。

良性発作性頭位めまい症(BPPV)の原因は、内耳の耳石器に付着している小さなカルシウムの結晶(耳石)が剥がれ落ちて三半規管の中に入り込むことです。

本来いるべき場所から外れた耳石が三半規管内で動くと、頭を動かした際にリンパ液の流れを乱し、脳に「体が回転している」という誤った信号を送ってしまいます。その結果、実際には静止していても首を動かすとめまいを感じる発作が生じます。耳石が半規管内を漂っていても、頭を動かさず安静にしていればめまいは比較的すぐに治まるのが特徴です。

耳石が剥がれ落ちてしまう明確な原因は特定しづらいものの、加齢に伴い耳石が劣化して剥がれやすくなることや、頭部への軽い衝撃、長期間ベッド上で安静にしていた後などに起こりやすいとされています。実際、サッカー選手がヘディング動作を繰り返したことが誘因となった症例も報告されています。

また、突発性難聴やメニエール病など他の耳の病気があった場合にも発症しやすく、いったん良性発作性頭位めまい症になった方は繰り返し再発するケースもあります。ストレスや過労、睡眠不足、風邪などもめまいを誘発しやすい要因となるため、こうした誘因の除去も重要です。

症状

良性発作性頭位めまい症では、ある特定の頭の位置や動きにより回転性のめまい発作が誘発されます。

日常生活の中で例えば以下のような動作をしたときに症状が起こりやすいです。

  • 朝、起き上がろうとしたとき(寝床から頭を起こす瞬間)
  • 就寝中に寝返りを打ったとき(布団の中で体位を変えたとき)
  • 上を向いたとき(天井を見上げる動作や、高い所の物を見ようとしたとき)
  • 急に振り返ったとき(後方を振り向くような首の動きをしたとき)

こうした頭の動きに伴い、「周囲がぐるぐる回る」ような激しいめまい発作が生じます。発作の持続時間は数秒から長くても数分程度で、比較的短時間で自然に治まるのが特徴です。

めまい発作中は冷や汗が出たり気分が悪くなって吐き気や嘔吐を伴う場合もありますが、耳鳴りや難聴(聞こえにくさ)といった耳の症状は基本的に生じません。これは内耳のバランスを司る部分だけが影響を受け、聴力を司る蝸牛(かぎゅう)には異常がないためです。そのため、耳鳴りや難聴を伴う場合はメニエール病など他の原因が疑われます(詳しくは後述)。

良性発作性頭位めまい症という病名には「良性」とありますが、めまい発作そのものは患者さんにとって非常につらい症状です。突然の激しい回転性めまいにより、立っていられなくなったり転倒しそうになることもあり、初めて発作を経験した際は強い不安や恐怖を感じるでしょう。特に40〜60代以降の中高年の女性に多くみられる傾向がありますが、若年層でも発症することがあり、誰にでも起こりうるめまいです。

放置するとどうなる? — 放置するリスク

「良性」という名前から、良性発作性頭位めまい症は放っておいても大丈夫ではないかと思われがちです。しかし、適切に対処せず放置すると様々なリスクがあります。

  • 慢性化・症状の長期化
    • めまい発作への恐怖から首を動かすこと自体を避けるようになると、耳石が半規管から排出されにくくなり、かえって症状が長引く可能性があります。必要以上に安静にし過ぎることは、治癒を遅らせる一因となります。
  • 生活の質の低下
    • めまいへの不安から日常生活での動作や外出・運転・運動などを控えるようになると、その人の生活の質(QOL)が著しく低下します。活動量が減ることで体力や筋力の低下を招き、疲れやすくなるなど悪循環に陥ることもあります。
  • 転倒によるケガの危険
    • 発作中にバランスを崩して転倒するリスクが高まります。特に高齢者では転倒により骨折などの重大なケガにつながる恐れがあります。日常的にふらつきがある状態を放置するのは非常に危険です。
  • 精神的ストレスの蓄積
    • 繰り返すめまい発作により「まためまいが起きるのでは」という不安やストレスが蓄積すると、メンタル面の不調(不安障害や抑うつ状態)を引き起こす場合もあります。

さらに注意すべきは、めまい症状を自己判断で「良性だから大丈夫」と決めつけてしまうことです。

めまいの中には脳卒中(脳梗塞・脳出血)など命に関わる疾患が原因のものもあります。特に「今まで感じたことのない激しい頭痛を伴う」「めまいが数時間以上、あるいは何日も続く」「ろれつが回らない・言葉が出てこない」「手足のしびれや脱力、歩行障害を伴う」等の症状がある場合は、良性とは限りません。

そのような症状がみられたら直ちに脳神経外科・脳神経内科や救急外来を受診し、精密検査を受ける必要があります。安全のため、自己判断で様子を見るのではなく専門医の診断を仰ぐことが大切です。

よくある質問(FAQ)

首を動かすとめまいがするのですが、考えられる原因は何ですか?

頭や首を動かしたときにグルグルと目が回るようなめまいが起こる場合、まず疑われるのが良性発作性頭位めまい症(BPPV)です。

この病気では耳の中の耳石が剥がれて三半規管に入り込み、特定の頭位の変化でめまいが誘発されます。典型的には、朝起き上がるときや寝返りをした拍子に発作が起こり、数十秒以内で治まるのが特徴です。

めまい以外に吐き気を伴うこともありますが、耳鳴りや難聴が無いようならBPPVの可能性が高いでしょう(逆に耳鳴りや聞こえの低下がある場合は他の疾患を考えます)。ただし素人判断は禁物ですので、必ず専門医を受診して原因を特定してもらってください。

良性発作性頭位めまい症は放っておいても自然に治りますか?

BPPVは数日〜2週間程度で自然軽快するケースも多く報告されています。実際、「良性」と呼ばれるように生命に危険はなく、治療をしなくても後遺症を残さず治ることもしばしばあります。

しかし、一部には1ヶ月以上めまい症状が続く難治性の例もあります。また治ったと思っても再発することが多い病気です。放置している間に何度も発作を繰り返すと、日常生活に支障を来したり転倒事故の危険もあります。

さらに、めまいの原因が本当にBPPVなのか専門医の診断を経て確認することも重要です。他の疾患(例えば脳の病気)が隠れていないとは言い切れませんので、症状が軽くても油断せず耳鼻咽喉科を受診することをお勧めします。

受診案内

良性発作性頭位めまい症かなと思われる症状(首を動かすとめまいがする等)にお悩みの方は、お早めに専門医の診察を受けましょう。

田中外科医院では、日本耳鼻咽喉科学会認定の耳鼻咽喉科専門医が在籍しており、めまいの原因精査から治療まで丁寧に対応いたします。めまいは放置せず、まずはお気軽に当院までご相談ください。