日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会認定 専門医在籍施設

咳ぜんそく・アレルギー性咳嗽(がいそう)

咳ぜんそくとアレルギー性咳嗽は、長期にわたって乾いた咳(空咳)が続くことを特徴とする病気です。

これらは喘息(ぜんそく)の前兆や特殊なタイプとも考えられる病態で、適切な治療を行うことで症状の改善が期待できます。

原因

咳ぜんそく・アレルギー性咳嗽の原因には、アレルギーによる気道の慢性的な炎症や、刺激に対する気道の過敏性亢進(反応しやすい状態)が関与しています。

ほこりやダニ、花粉、ペットの毛などのアレルゲンの吸入、あるいは寒暖差、タバコの煙、ストレス、鼻炎・副鼻腔炎・気管支炎といった気道の感染症などがきっかけで咳症状が始まるケースが多く報告されています。

特にアレルギー体質(アトピー素因)のある方に起こりやすい傾向があり、気道にアレルギーによる軽い炎症が起こることで咳の神経が敏感になり、わずかな刺激でも咳が出やすい状態になっていると考えられます。

症状

どちらの病気も長引く乾いた咳が主な症状ですが、それぞれに特徴があります。

咳ぜんそくの症状
  • 長引く空咳
    • 1か月以上にわたり咳が続きます。慢性的に空咳が続くため、日常生活で「風邪が治ったのに咳だけ残っている」という状態が続くことがあります。
  • 喘息特有の症状がない
    • 咳以外の症状はあまり現れません。ゼーゼー・ヒューヒューといった喘鳴(ぜんめい)や息苦しさ(呼吸困難)は通常みられず、発熱や痰(たん)もほとんどありません。
  • 夜間や早朝に悪化
    • 咳は就寝時や明け方に強まる傾向があり、咳込みで夜中に目が覚めてしまうこともあります。このため、睡眠不足になるケースもあります。
  • 喘息への移行リスク
    • 喘息(気管支ぜんそく)の一歩手前の状態とも言われ、放置すると約30%の患者さんが本格的な喘息に進行する可能性があります。咳ぜんそく自体が突然命に関わるものではありませんが、将来的にゼーゼーと息苦しくなる典型的な喘息発作へ移行しうる点には注意が必要です。
アレルギー性咳嗽の症状
  • 慢性的な乾いた咳
    • 他に目立つ症状はなく、乾いた咳(空咳)だけが長期間続きます。風邪のような発熱や鼻水もなく、「咳以外は元気」な状態が何週間も続くのが特徴です。
  • 些細な刺激で咳込む
    • アレルギー性
    • 咳嗽では気道が非常に敏感になっており、軽い刺激で容易に咳が誘発されます。たとえば埃っぽい場所に行ったり、冷たい空気を吸い込んだり、会話中や運動時にノドが刺激されただけで咳き込んでしまうことがあります。空気の乾燥やエアコンの風、タバコの煙なども誘因となりえます。
  • 咳が出やすい時間帯
    • 特に夜間から早朝にかけて咳がひどくなる傾向があります。就寝中や明け方に咳込むことが多く、ひどい場合は睡眠の妨げになることもあります。日中より夜間に症状が強く出る点は、咳ぜんそくと共通する特徴です。
  • 喘鳴や呼吸困難は伴わない
    • 名前に「咳嗽(がいそう)」とある通り、症状は咳だけです。ゼーゼー・ヒューヒューといった喘鳴や息苦しさは起こりません。

放置した場合のリスク

咳ぜんそくを放置すると、約30%のケースで数年のうちに本格的な気管支喘息(ぜんそく発作を伴う状態)に移行すると報告されています。一時的に自然軽快する場合もありますが、治療しないまま長引けば再発や悪化を招く恐れがあります。

アレルギー性咳嗽も同様に、適切に対処しないと咳が何週間も続くだけでなく、治療を中断するとまたぶり返すという経過をたどりがちな疾患です。実際、アレルギー性咳嗽は再発しやすい病気で、症状が良くなって自己判断で治療を止めてしまうと再燃しやすいことが知られています。

咳が長く続くことで、夜間の咳込みによる睡眠不足や日中の疲労感など、生活の質(QOL)の低下を招くことも大きなリスクです。特に就寝中に咳き込んで眠れない状態が続くと、体力の消耗や日中の集中力低下につながります。

また、「ただの咳だろう」と放置している間に、症状の裏に別の疾患(副鼻腔や咽喉頭酸逆流症、咽頭癌・喉頭癌・肺癌など)が隠れていたり、咳が悪化して合併症を引き起こしたりする可能性も否定できません。実際に、長引く咳の原因としては喘息やアレルギー以外に、副鼻腔気管支症候群(副鼻腔炎が絡む咳)や逆流性食道炎などが潜んでいる場合もあります。

いずれの病気も、症状が改善してきても自己判断で治療を中断せず、医師の指示に従って継続的に治療を行うことが大切です。特に咳ぜんそくでは、症状が落ち着いても気道の炎症をしっかり抑えておかないと再発しやすいため、医師と相談のうえ一定期間治療を続ける場合があります。

また、一度良くなった後でも同じような咳が再発した場合には、できるだけ早期に受診して相談することが推奨されています。早めの受診により、喘息への進行を防いだり、他の原因の有無を確認したりすることができます。

咳ぜんそくとアレルギー性咳嗽は何が違いますか?

どちらも長引く乾いた咳が主症状で、ゼーゼーという喘鳴や息苦しさがない点は共通しています。

ただし、咳ぜんそくは気管支喘息(ぜんそく)の一種と考えられ、将来的に喘息発作(ヒューヒュー・ゼーゼーと苦しくなる症状)を起こす本格的な喘息に進展しうる状態です。

長引く咳はただの風邪とどう見分ければよいですか?

風邪による一過性の咳は通常1~2週間程度で自然に治まり、咳以外にも発熱や痰・鼻水といった症状を伴うのが一般的です。これに対し、咳ぜんそくやアレルギー性咳嗽では熱や痰がほとんど出ず、咳だけが3週間以上も続く場合は要注意です。

咳ぜんそく・アレルギー性咳嗽は自然に治りますか?放置しても大丈夫でしょうか?

咳ぜんそくは、自然治癒するケースもありますが、約3割の患者さんは治療せず放置すると本格的な喘息へ移行すると言われています。

アレルギー性咳嗽も一時的に良くなっても繰り返し再発しやすく、症状が長引く傾向があります。放置すれば咳が何週間も続いてしまい、先述のように睡眠不足や体力低下につながるおそれがあります。

受診案内(受診の目安とタイミング)

長引く咳が続くときは早めに受診しましょう。 特に、熱や痰もないのに2週間以上咳が続く場合や、夜間・早朝に咳で目が覚める場合、過去にも同じような咳を繰り返したことがある場合などは、咳ぜんそくやアレルギー性咳嗽などの可能性があり、医療機関での検査が必要です。

こうした症状に心当たりがあるときは「咳だけだからそのうち治るだろう」と自己判断せずに、できるだけ早めに専門医を受診してください。

当院でもアレルギー科において、長引く咳(咳ぜんそく・アレルギー性咳嗽など)の診療を行っています。 なかなか治まらない咳でお困りの方は、お気軽にご相談ください。早めに受診することで症状の悪化を防ぎ、喘息への進行を食い止めたり、つらい咳症状を和らげたりすることが可能です。「もしかしてぜんそくやアレルギーによる咳かも?」と感じたら、無理に我慢せず医師の診察を受け、安心につなげましょう。